鮮度や素材を生かした柔らかさは自然豊かな土地からのアプローチ
作品として認められたことからワクワク感が生まれる
標高3000m近い山が連なる立山連峰。そこから流れた水が一気に流れ込む富山湾は“天然のいけす”と呼ばれるほど海産物が豊富。富山が大事にしている鮮度の通り、生まれたそのまま、できたままのものを大切にする“アール・ブリュット(生の芸術)”の精神が息づいています。そんな富山湾にほど近い町で活動しているのが、障害者芸術活動支援センターばーと◎とやまです。
「10年ほど前から、月に数回ワークショップという形で障がいを持っている方にアートに取り組んでもらい、発信してきました。シブヤフォントのことは以前から繋がりがあって知っていたんです。是非うちでも連携をとってやりたいと思っていたところ、“ご当地フォント”の取り組みが始まると聞き、県内のアート支援の活性化を促すため私たちも中間支援役として参画することにしました」
今回“とやまふぉんと”を制作した「花椿かがやき」に通ってくる方々は、絵やアイロンビーズのほか、刺し子を手がける方が多かったのだそう。刺し子の文字を元にフォントを作ったら、唯一無二感が表現できて面白いのではないかという声が上がり、刺し子作品を中心にフォントやパターンが作られていきました。
「刺し子はいつも身近に見ていたものなので、面白いと言われて意外な感じがしました。でも、こんな小さなところで作業として細々とやっていたことが認められて、こういった形で取り上げてもらえることは、私たちも嬉しかったですが本人、家族もとても誇らしげです。今では“これ描いたけど、また見てもらえるかな?”と、障がいのある方たちの日々のワクワク感にも繋がって、周囲にも明るい雰囲気、ほのぼのとした楽しさが広がっています」
アートのパワー、エネルギーに突き動かされて
そんな楽しさ、和気藹々とした中から生まれた障がいのある方々のアートには、想像を超えるパワー、エネルギーがあって衝撃を受けたと語るのはフォントやパターンへのデザインを担当したデザイナーの方々。だからこそ、作業には並ならぬ力が入ったのだそう。
「正直最初は、障がいのある方と触れあうのは初めてだったので不安もあったんですが、いざ始めると私たち自身の方が楽しんでしまいました。一番のモチベーションになるのはアートの素晴らしさ。私たちのものだけにしておくのはもったいないと思うんです。デザインをしていると、作者の顔が思い浮かんできて、その方に自分の作品がこんな風になるんだと喜んでもらえるものにしたい。できれば全員の作品を形にしたいと思いましたが、そういうわけにもいかないので、複数の作品を組み合わせて作り上げたものもあります」
“ご当地フォント”に参画してよかったことのひとつは、今までとは違う人とのつながりができたことなのだとみなさんが口を揃えます。
「私たちは“地産地生”ということを意識して障がいのある方のアート活動に取り組んできました。“消”ではなくて生かす方の“地生”。この活動が、障害のある方のアートの素晴らしさを生かすとともに、いろいろな人と繋がって、多くの人に伝えられるというところに深く共鳴・共感しました。これをきっかけに障がいのある人への見方が変わる人が増え、自分もやってみようと思う人がどんどん増えていけば、面白いアイデアがもっと出てくるのではないかと期待しています」
こちらのストーリーで生まれたフォント・パターン
ストーリーづくりを
ご一緒しましょう
「ご当地フォントサイトにデータを登録したい!」「デザイナーを紹介してほしい!」「アートワーク(フォント・パターン)を活用したイベントを企画提案してほしい」など、さまざまなお手伝い、連携を進めております。ぜひお声がけください。